家系総本山 吉村家|この苦味、この塩分、これこそが元祖家系ラーメンだ! @横浜市西区[神奈川県]
家系ラーメンの原型
豚骨醤油スープにチャーシュー・海苔・ほうれん草が載る構成の、家系ラーメンを称するすべてのラーメンにとっての手本にして、かつ家系ラーメンの原型とも言うべき一杯が着丼。
醤油感が強めの豚骨醤油スープ
黒い器にたたえられたダークブラウンのスープは、醤油感が強めに表れている。味覚を撫でるようなまろやかでコク深いベースの旨味の中に、苦味と塩辛さが凛と効いて粋なアクセントを形成している様態は、家系チェーン店などの万人受け志向のスープとは一線を画し、個性が前面に出た鋭い味わいである。客におもねるばかりが正解ではないと主張するかのようでもあるが、その味には不思議と説得力がある。
オーソドックスな作りの秀逸な麺
吉村家やその流れを汲む店がタッグを組む製麺所は、酒井製麺である。吉村家とその直系店のみにしか卸さないと言われる特注の中太麺は、弾力感・もっちり感がいい感じに出たオーソドックスな作りで、なかなかハイレベルなクオリティが実感できる仕上がりとなっている。吉村家がラーメン界において不動の地位を築いてこられたのも、酒井製麺というパートナーがあったからこそと言えるかもしれない。
スープとの相性が良いチャーシュー
程良く柔らかいチャーシューは、燻製されていて、また脂のしつこさを抑えた淡白な味わいである。味が強いスープに対して、スモークの乙な風味によって一定の主張を成すとともに、味の淡白さがスープの押しの強さを上手くいなしている感じで、まさにこうでなくてはこのスープにはマッチしないと思えるような、なんとも巧みな出来栄えである。
総括
今回味わった元祖家系ラーメンは、十年一昔のラーメン業界において、今もって最前衛を邁進するような逸品であったが、その旨さはやはり創業以来の進歩の積み重ねの上に結実している。長期的見地で過去を振り返れば、吉村家のラーメンは大きく変遷し、ダイナミックに進歩しているわけである。だが吉村家をここまで育て上げた吉村実氏も高齢となり、現在は御子息が吉村家の店主を務め、すでに代替わりしている。吉村家は今後も進歩を続けてラーメン業界を牽引するような存在であり続けるのか、はたまた吉村実氏が作り上げた味を伝統として頑に守っていくだけなのか、注目されるところであろう。