ビブグルマン巡り|東京2020・ラーメン #2:独特の麺で勝負する新星! 手打式 超多加水麺 ののくら @亀有[東京都葛飾区]

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特製中華そば(醤油)

鎮座するレアチャーシューがなんとも美味しそうで、食欲がかき立てられる一杯が着丼。

 

粘るようなもっちり感が特徴の麺
超多加水麺

程良い硬さの平打ち麺は、縮れているというより、むしろねじれている感じである。この超多加水麺は多加水麺らしいプリッとした食感はあまり表れていない。その代わり粘るようなもっちり感が強く表れているのが最たる特徴で、まさにその点においてこそ、この超多加水麺の真骨頂があるわけだ。ユニークでとても面白みあり、粋な食感である。だがしかし、ここにかすかな違和感を伴いつつ、根本的にしてかつ本質的な1つの疑念が生じるのを禁じえないのではなかろうか。すなわち、いかに粋な食感であろうとも、果たしてこういうもっちり感は旨いと言えるのだろうかと。

 

パンチの効いた醤油スープ
醤油スープ

スープは見た目の色合いに強めの醤油感が出ているが、実際見た目の通りで、濃いめの旨味に微妙な苦味とほのかな生姜の風味を作用させてあって、清湯のスープにしてはパンチがなかなか効いている。このスープをレンゲでひと口目を口に含むや、鋭敏な味わいがサッと味覚に迫り、一瞬にして微かな生姜の後味を残して引いていった。まるで一撃離脱戦法みたいな強弱のうねりが、なんとも絶妙で驚かされた。個性の強い麺に対応して、こうしたスープにしているのであろうが、それはセオリーに従っているとも見なせるだろう。

 

バランスに配慮した各種具材
チャーシュー

チャーシュー・ワンタンは、麺・スープとの整合性が取れるようにアピール度が高めに調整されている。とても柔らかくて、上質感に溢れるチャーシューは、豚と鶏の2種類。鶏チャーシューはスパイスを効かすことで、アピール度を向上させている。豚チャーシューは外側を炙ることで、乙な苦味をまとわせ、味覚への当たりを強めている。小ぶりの餃子ぐらい餡が入っているワンタンは、味や質感は平凡だが、スパイスを強めに効かせて、抜かりなく存在感を高めている。

 

総括
暖簾

今回は、食べログで現在全国2位のラーメン店を訪れ、粘るようなもっちり感を有する超多加水麺を中心に構成された、一見パーフェクトな醤油ラーメンを味わったのだが、やはりそのラーメンの要である超多加水麺の食感に存する欠点に触れないわけにはいかない。低加水麺がわりと一般的な中京圏や西日本と比較すると、手打式 超多加水麺 ののくらが所在する東京やその周辺では、低加水麺はあまり一般的ではないようだ。ゆえに格別優れた低加水麺が生み出す、しっとりとして均整のとれたもっちり感を知らないで、超多加水麺のもっちり感に感激している人も、もしかしたら多いのかもしれない。東京だと、例えばミシュランガイド東京で4年連続1つ星の創作麺工房 鳴龍の担担麺に使われる極細麺が分かりやすいが、あの本気で旨い、文句なしの至上のもっちり感を一度でも味わえば、ほとんどの人が以後、ののくら超多加水麺には納得できなくなるのではなかろうか。鳴龍の上質なもっちり感と比べると、均質性を欠き、あまりにも雑で質感に劣るもっちり感であるから。尤も、これは超一流店の鳴龍の麺と対比した場合の所感であり、標準的なラーメン店の麺と比較すれば、ののくら超多加水麺はとてもハイレベルであると、誤解を避けるために付け加えておく。

 

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