ビブグルマン巡り|東京2020・ラーメン #3:路面電車で行こう! Ramen にじゅうぶんのいち @東尾久[東京都荒川区]

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特製塩そば
特製塩そば

レアチャーシューが見た感じ、非常に上質そうで、期待感がいやが上にも高まる一杯が着丼。

 

オーソドックスな中細麺
中細麺

程良い硬さの平打ちの中細麺は、表面がやや滑らかで、もっちり感と柔軟性がわずかに顕在している様態だが、概してオーソドックスな作りである。

 

若干のパンチを秘める塩スープ
塩スープ

若干の強さが感じられ、あっさり系とは言いにくい塩スープは、前面の味はある程度抑制されているが、背後の旨味には結構厚みがあり、広くて深い懐を持つ味わいとなっている。十分な余韻が後味までしっかりとカバーしてくる辺りには、ビブグルマン店らしい確かな腕前も感じられる。しかしなぜ、このような構成になっているのかが曖昧で、作り手の料理思想が見えてこない。

 

超一流らしからぬ部分もあるチャーシュー
豚チャーシュー・鴨チャーシュー

チャーシューは豚と鴨の2種類。共に上質感のある淡白な味である。またどちらも柔らかめではあるが、一定の歯ごたえも有している。だが超一流店にしては、食感にイマイチな部分が混じっていて、微妙に作り込みの甘さが表れている感じであった。ともあれ、ステレオタイプにはまったような独自性が僅少な豚チャーシューに比べ、鴨チャーシューは素材そのものの独自性が強くて、少しでも料理の個性を高めようとする意図も感じられなくもないわけだが、逆に「奇を衒わず、普通に鶏チャーシューでもいいのではないか」と断じられてしまいかねない程度の完成度に留まっている。

ただし、以上の評価はあくまで超一流店レベルでの話であって、標準レベルのラーメン店のチャーシューと比較するなら、Ramen にじゅうぶんのいちのチャーシューは極めて秀逸であると、誤解を避けるために付け加えておく。

 

総括
ビブグルマン店であることを示すプレート

今回は、食べログで現在全国17位で、またミシュランガイド東京では3年連続でビブグルマンの名店の看板メニューの塩ラーメンを味わったわけだが、率直に感想を述べると、主役のいない劇でも見たとき、あるいはテーマのはっきりしない小説でも読み終えたときみたいに、いったい自分はどこに感動すればいいのだろうかと、首を傾げてしまうくらい、つまらない印象が後に残るラーメンであった。この塩ラーメンを味わったのは先月だったが、実は今月初めに横浜の支那そばや 本店を訪れる機会があった。ラーメンの鬼とも呼ばれたカリスマの故佐野実氏が遺した名店である。そこで、淡麗系の達人だったラーメンの鬼が生涯を賭して完成させた塩ラーメンを味わったのだが、淡麗系の控えめな体裁の奥から鋭い懐刀で攻めるような二面性のある激旨スープに甚く感激させられることとなった。そのとき思ったのだ、もしもにじゅうぶんのいちのスープに完成形なるものを措定するならば、この支那そばやのスープのようなものになるのではないかと。そしてまた、天才料理人であった故佐野実氏が人生を費やして到達した境地、そこに至る道の途上ににじゅうぶんのいちはまだ立っているに過ぎないのではないかと。ラーメンの鬼が真の鬼籍に入ってより6年が経ち、食べログでは現在神奈川県で22位のラーメン店という低評価に甘んじている支那そばやではあるが、現在全国17位のにじゅうぶんのいちよりも遥かに優れていると私が思う理由は、このような次第である。

尚、繰り返しになるが、以上の所感はあくまで支那そばやのラーメンを基準にした場合のもので、標準的なラーメンと比べればにじゅうぶんのいちのラーメンは非常に優れていると、誤解を避けるために再度付け加えておく。

 

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