ビブグルマン巡り|東京2020・ラーメン #4:超極太麺が未来を切り開くか!? 純手打ち 麺と未来 @下北沢[東京都世田谷区]

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特製塩らーめん(海老わんたん・味玉・肉増し)・大盛り
特製塩らーめん(海老わんたん・味玉・肉増し)

超極太麺が具の下に隠れ、一見何の変哲もない塩ラーメンが着丼。

 

ちょっとフワッ、それから粘る
超極太麺

この店のトレードマークの超極太麺は、加水率47%とも言われる多加水麺である。粘るようなもっちり感が特徴で、若干フワッとした感触もある。その一方で多加水麺らしいプリッとした食感はほとんどない。私自身の第一印象は、往年の名優松田優作が演じるジーパン刑事ばりに「なんじゃこりゃ」と叫びたくなるくらい衝撃的であったわけだが、一つ壁を突破したようなあまりにもアバンギャルドなこの麺は、しかしながらもっちり感が均質でなく雑で、さほど旨いとは言えない。それでも、ラーメンの既成概念に風穴を開け、新風を吹き込んだ功績は大いに評価されて然るべきであろう。

 

素朴さを演出するスープ
塩スープ

塩スープはあっさり系のややおとなしい味わいで、幾らか野暮ったい雰囲気を演出している様子である。麺やチャーシューのざっくばらんな作りを考慮すれば、田舎風の野暮ったさ、言い換えれば気取らない素朴さを打ち出すことは、全体のイメージの整合性を保つ上で理に適っているだろう。

 

昔ながらの田舎風チャーシュー
チャーシュー

チャーシューは東京のシモキタにあるビブグルマン店とは思えないような田舎じみた平凡な作りである。だが、このラーメンの主役の、繊細さが微塵もない麺とのバランスを考えれば、これがベストチョイスであることは疑いない。その意味では、作り手の料理思想が垣間見えるチャーシューでもあるだろう。

 

良くも悪くもないスープ茶漬け
スープ茶漬けセット

このスープ茶漬けはラーメンのスープを入れて味わう。しかし、不味くはないとはいえ、特に旨いわけでもない。私は家系ラーメンやその類の豚骨醤油ラーメンを食べるときに時々、玉子かけご飯に味変用のおろしニンニクやガーリックチップを加えた上で、ラーメンのスープでスープ茶漬けのようにするのだが、それの方が遥かに旨いと思う。

 

総括
店頭の看板

今回は、超極太麺を使ったある意味常識外れなラーメンを味わったわけだが、その感想を率直に述べるなら、なんとも荒削りで青くさく、けれどもそれだからこそ、これからの伸びしろがまだ存分にあり、未来を期待できるかもしれないと思えてくるラーメンであった。かの天下に冠たる名店らぁ麺 飯田商店も今を遡ること5年前、2015年5月にミシュランガイド横浜・川崎・湘南2015特別版が発売された時点では、ビブグルマンに届かない星無し、つまり現在のミシュランプレートでしかなかったのだ。それからわずか5年でラーメン界の頂点、もしくは限りなくそこに近い位置まで駆け上った。ひとえに店主の飯田将太氏の、自らのラーメンを改良していく真摯な取り組みの結果だと思うが、こういう大化けを成す可能性が純手打ち 麺と未来にもあるのではないかと、私には思えるのである。なぜなら、既成概念に捕らわれず、大胆な発想で新しいものを生み出す資質は、誰にでも備わっているわけではなく一種の天賦の才であり、そうした資質が純手打ち 麺と未来のラーメンを見ると、この店主にあるのではないかと思えるからだ。ゆえにラーメン界の異端児というより、むしろラーメン界の革命児となるくらいの気概で、凄いラーメンを完成させてもらいたいと、ラーメンの一愛好者として期待してしまう次第である。

尤も、ミシュランガイドでビブグルマンに選ばれているということは、純手打ち 麺と未来のラーメンはすでに十分に完成されていて、改良などは必要なく、せいぜい微調整で事足りるとも考えられる。もしその考え方が正しいと判明すれば、改良云々を話題にするのは余計なお世話であり、さらには礼を失する行いにすらなってしまう。その場合は、素直に謝意を表したいと思う。

 

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