ビブグルマン巡り|東京2020・ラーメン #17:中庸の美学!? 6年連続ビブグルマン『麺処 びぎ屋』の奇を衒わない自然体の醤油ラーメン @学芸大学東口商店街[東京都目黒区]

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特製醤油らーめん・大盛
特製醤油らーめん・めん大盛

3種類のチャーシューが載る以外は特に目を引くところがなく、見た感じはどちらかというと平凡な印象の醤油ラーメンが着丼。

 

節系の風味がいい感じのスープ
醤油スープ

醤油スープはしっかりとした味が付いていて、また節系の風味を醸しているのが特徴。日本料理の基本ともいえる節系が前面に出ているので、どこか昔懐かしい素朴な風情がある。堅実かつ丁寧にごく普通の醤油スープを作り上げたような実直な味わいに仕上がっているため、気負いのないさり気ない自然体の雰囲気が漂い、納得のいく旨さである。

 

弾力性がいい感じの細麺
細麺

適度な茹で加減の細麺は、弾力性がわりといい感じに表れていて、派生的なもっちり感もそれなりに良好。際立つようなアピール力は持たないものの、なかなかハイレベルな出来だ。

 

程良い柔らかさのチャーシュー
3種類のチャーシュー

チャーシューは豚2種類と鶏1種類。いずれも柔らかいが、柔らかすぎない食感で、結構旨い。他のビブグルマン店のような上質感は追求しない仕様のようで、むしろ普通感を積極的に演出している気配さえある。それゆえ、全体の気取らない素朴なイメージに上手く沿い、かつ全体的イメージを補完する役割も果たしている。

 

総括
店舗の看板

今回は、6年連続でビブグルマンの名店麺処 びぎ屋で、奇を衒わないオーソドックスな醤油ラーメンを味わったのだが、技巧に走らずとも素晴らしいラーメンを作れることを証明するかのような絶品であった。その絶品ラーメンが、麺・スープ・具それぞれが同じ方向性で同じくらいの魅力を持って構成されているのには、ちょっと驚かされた。なぜ構成要素間に強弱を付けず、ある意味で歪とも思えるような等質になっているのだろうか。おそらくは、最大多数の最大満足を目差すという、経営学的な合理性に適った手法を徹底して用いているからであろう。極端を切り捨てて、少数派やニッチに照準が合うのを避け、常に正規分布の山の部分に相当する多数派に迎合していくという料理思想をラーメン作りの全手順で堅持しているからこそ、まずはラーメンの各要素が見事なほどに中庸にはまっている。もちろん、ここで言う中庸は凡庸という意味ではなく、古代中国以来、儒学で尊ばれてきた中庸である。そして中庸な各要素を組み合わせて、ラーメン全体として上位次元の中庸を実現している。要素レベルから全体レベルまで、純粋に中庸。一点の曇りなく中庸。まさに中庸の美学を具現化したものが、麺処 びぎ屋の醤油ラーメンだと言えるだろう。

 

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