東京駅一番街15周年記念 特別メニュー #9|ソラノイロ・NIPPON:ソラノイロ牛二郎 @東京ラーメンストリート[東京都千代田区]

最終更新日

ソラノイロ牛二郎
ソラノイロ牛二郎

本店で限定販売されたメニューをアレンジしたというラーメンが着丼。

 

直感的な旨さがいい感じの牛骨系スープ
牛骨スープ

醤油スープは牛骨系の旨味がしっかりと付いていて、大まかに言えば、すき焼きや牛丼などと同系統の分かりやすい直感的な味わいである。ラーメンスープっぽくない気もするものの、これが意外といい線を行っている感じで、なかなか旨い。

 

二郎風のゴワゴワした麺
太麺

やや硬めの茹で加減の太麺は、二郎風のゴワゴワした食感である。いわゆるワシワシと食べる麺だ。ジロリアンに好まれる麺ではあるが、一般的な感覚からすれば全然旨くない麺であり、専らこういう麺だけを使う店はミシュランガイドやTRY大賞などのメジャーなメディアからは基本的にスルーされるようだ。

 

牛レアチャーシューと牛すじ煮込みが載る
牛レアチャーシュー
牛すじ煮込み

肉類は牛レアチャーシューと牛すじ煮込みの2種類が載る。牛レアチャーシューは結構柔らかくて、淡白な味。見た目にインパクトがあって、とても旨そうな雰囲気だが、実際の旨さはまあまあといった感じである。牛すじ煮込みはしっかりと味が付いていて、また概してとても柔らかい。けれども所詮はすじ肉ということで、食感がイマイチな部分も幾分含まれていた。ところで何故に牛すじ煮込みを載せているのか、素朴な疑問が残る。牛レアチャーシューと牛すじ煮込みの味の違いが顕著で、調和が乱れるし、蛇足ではないだろうか。牛レアチャーシュー単独の方がむしろ好ましいように、私には思える。

 

総括
店頭に掲げられた提灯

今回は、かつて3年連続でビブグルマンに選ばれた名店SORANOIRO 本店の系列店で、東京駅一番街15周年記念 特別メニューの二郎インスパイア系ラーメンを味わったのだが、女性に支持され、女性客の比率がとても高い店が、圧倒的に男性に支持される二郎を真似ているところから、既存の客層とは異なる新たな客層を開拓したいという意図がひしひしと伝わってきた。まさに意欲作のラーメンであったわけだが、ちょっと気になる点が1つある。それは、このラーメンのように二郎をその要素に分解して部分的に模倣するということに、如何ばかりの効果があるのかということだ。二郎以外の人気店であれば、ラーメンを要素に分けて長所だけを模倣することには当然、意義があるのだけれども、こと二郎に関しては冒頭にも述べたように、その要素はどこを取っても並以下の凡庸でしかない。結局のところ、二郎は価格対量比での抜群のコスパ、店員と阿吽の掛け合いで「ヤサイ、アブラ、カラメ」といったコールをして通な気分になれること、度の過ぎる分量のラーメンをワシワシと食して平らげる漢っぷりに自己満足できること、ジロリアンであるというアイデンティティを持てることなどを含む、総体としてのコンセプトで売るラーメンであって、決して旨さで売るラーメンではないのだ。その辺の事情は、ジロリアン関連でよく引用される「二郎は二郎という料理であって、ラーメンではない」というジロリアン自身の二郎についての認識にも表れている。ラーメンという尺度に当てはめれば、二郎の旨さではせいぜい二流のラーメンでしかなく、熱狂する価値など全然ないことになってしまう。しかし二郎には確かに魅力があって、ジロリアンの心をしかと掴んでいる。二郎が提示する独自のコンセプトにこそ、二郎の魅力の本質があるからだ。その独自性を、「二郎は二郎という料理」と言い表しているわけだ。したがって、今回味わったラーメンのように二郎風の麺を使い、二郎風にモヤシを載せたとしても、ほとんど何の効果もないと推測される。むしろ不味い麺を使ってマイナス効果になってしまっているようにも見える。今回訪れた店は、かつてミシュランガイド東京で3年連続でビブグルマンに選ばれたほどの名店の系列店だからこそ、二郎インスパイア系などには見向きもしないで、純粋に旨さで勝負する牛骨ラーメンを作り上げてほしかったと、思えてならない。

 

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