ビブグルマン巡り|東京2020・ラーメン #14:3年連続ビブグルマンの『八雲』で味わう、珠玉のワンタンメン @池尻大橋[東京都目黒区]

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特製ワンタン麺 白だし
特製ワンタン麺 白だし

白醤油を使用した黄金色のスープが、黒いテーブルとのコントラストによってよく映える一杯が着丼。

 

とてもあっさりしたスープ
白醤油スープ

白醤油スープはとてもあっさりした味。脇役に徹するための自制が効きすぎるほど効いて、カエシの存在感が希薄なので、出汁の凄みをダイレクトに堪能しているような感覚が生ずる。存分に納得のいく出来栄えだ。

 

おとなしい印象の細麺
細麺

適度な茹で加減の細麺は、やや弾力性が良くて、派生的にもっちり感も若干いい感じだが、概して特徴が目立たず、穏やかでおとなしい印象を受ける。スープと同様、麺も脇役に徹する姿勢である。

 

存在感が際立つエビワンタン
2種類のワンタン

ワンタンは、肉ワンタンとエビワンタンの2種類がそれぞれ3個ずつ、計6個が載る。肉ワンタンは餡がいささか蒲鉾的で、またソーセージ的でもあるわけだが、その弾力性にはなかなか面白みがある。エビワンタンは海老の風味の良さが傑出した逸品。かじった途端、皮の内に封じられていた粋な海老の香りが解放され、口内に充満しつつ鼻腔へ抜けていく。そのときの洒脱な高揚感は、まさにこのラーメンの主役たる千両役者の登場場面のようであった。つまるところ、肉ワンタンはエビワンタンの引き立て役といったところだろうか。

 

見た目に彩りを添えるチャーシュー
チャーシュー

ミシュランガイド東京でビブグルマンに選ばれている店のチャーシューは、上質感をアピールする一級品が多いが、この店のチャーシューは味的には地味な二級品。平凡な食感で、淡泊な味である。だが縁に食紅を施してあって、赤みを帯びているので、色調上のアクセントとして、ラーメンの見た目を良くする効用があるようだ。

 

総括
店舗の看板

今回は、3年連続ビブグルマン八雲で看板メニューのワンタンメンを味わったのだが、驚いたことにワンタンを中軸に据えた、まさかのラーメンに遭遇することになった。もちろん、ラーメンだからといって、麺やスープをアピールポイントにしなくてはならないわけではなく、色々な手法で優れたラーメンを目指せばいいと思うが、チャーシューならいざ知らず、ワンタンで来るとはあまりにも予想外で、虚を衝かれた格好になった。こういうやや特殊な部類のラーメンを主力メニューにしているから、この店では自信作を味わってもらうために配慮していて、券売機の殊更に大きなボタン4個を全部ワンタンメンに割り当てている。一方で客側も、この店に限らず他の店でも、積極的に店側の意図を酌み取ろうとする配慮が必要であろう。店側の意図を踏まえた上で敢えて店側が推さないメニューを選ぶのは結構だが、何も考えずに例えばチャーシューメンが好きだからなどの基準でメニューを選んでしまうと、超一流店を訪れたのに、意図に反して超一流レベルのラーメンを味わえないというようなケースが起こりかねない。

 

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