ご当地ラーメン探訪|船橋ソースラーメン #2:新感覚の味わいでソースラーメンの新たな方向性を提示する、拉麺 阿修羅[千葉県船橋市]

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船橋ソースラーメン・麺大盛
船橋ソースラーメン・麺大盛

ソースラーメンを今も看板メニューとする唯一の店中華料理 大輦の、焼きそばからの類推のようなソースラーメンとは異なり、焼きそば感が皆無のソースラーメンが着丼。

 

スパイスラーメンを彷彿とさせるスープ
ソーススープ

ソーススープは、ウスターソース感はわりと抑制されていて、代わりにスパイス感が幾分顕現する仕様。軽快なソース感とさっぱりとしたスパイス感が織り成す味わいに、胡麻とバターの風味が添えられ、なかなか洒落た風情の斬新な旨さに仕上がっている。このスープ、実は東京都江戸川区にあるスパイスラーメンのパイオニアのスパイス・ラー麺 卍力のスープを彷彿とさせる味で、おそらくは後発の卍力阿修羅ソースラーメンを模倣するレベルで参考にしたのだろう。ちなみに阿修羅も卍も共に仏教関連の言葉で、神田にある味噌ラーメンの名店鬼金棒で修業したにもかかわらず、鬼金棒を連想させない卍力という屋号を掲げたところに、私は卍力の店主の阿修羅への敬意を読み取りたいのだが、それはさすがに想像が過ぎるであろうか。

 

弾力性に秀でた麺
中細麺

適度な茹で加減の中細麺は、弾力性が結構良好で、まあまあいい感じの出来である。

 

ごく平凡なチャーシュー
チャーシュー

チャーシューは特に変わったところのない平凡な作り。平凡なりに、やや柔らかくてそこそこ旨い。

 

総括
店舗の看板

今回は、千葉県船橋市の超マイナーご当地ラーメンの船橋ソースラーメン拉麺 阿修羅で味わったのだが、そのソースラーメンらしからぬ垢抜けした体裁と洒落た味わいに、ソースラーメンの進化の方向性と、新展開の萌芽を見る思いがした。ところが現実にはもうとっくにソースラーメンの新展開は始まっているようで、船橋からわりと近い東京都江戸川区で2014年5月に開業したスパイス・ラー麺 卍力が、拉麺 阿修羅ソースラーメンを改良した感じのラーメンをスパイスラーメンと名付けて売り出し、一定の成功を収めている。これは、いわばソースラーメンの第1ステージはジリ貧に向かいつつも、第2ステージが始まっているようなもので、今後の展開次第ではスパイスラーメンが人口に膾炙していく可能性も秘めているだろう。その場合でも、ソースラーメンという名称は消滅してしまうかもしれない。もしもそうなると非常に残念なことであるが、しかし一つ指摘しておきたいのは、ソースラーメンという名称自体、すでにして本当の名称ではないということだ。かつて京成船橋駅の近くにあった船橋ソースラーメンの元祖の花蝶ソースラーメンダイヤキと呼んでいた。花蝶から作り方を教わった店の中には、それを踏襲してダイヤキというメニュー名を使う店もあったが、2015年6月に利平という店が閉業したことにより、一緒にダイヤキも消滅してしまった。つまりは、我々がソースラーメンと言うとき、それは忘却された真の名称に代わって置き換えられた名称にすぎないのだ。ゆえにソースラーメンという言葉が消え去るとしても、それはある意味、因果応報だと捉えていいかもしれない。

 

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